地域銀行の旧支店ビルを全面改修したシェアオフィスやシェアサウナなどを備える複合施設『bird bird』です。我々は1階のシェアダイニングの空間設計を行いました。

『bird bird』は「シェアリングコミュニティ」をコンセプトとしており、その象徴の食の空間デザインをという依頼でした。ただ場所は銀行の裏側（宿直室、炊事場、金庫室など）で、コンクリート壁で細かく部屋が分かれる状況でした。それを逆手にとり「コンクリート壁をぶち抜いて各部屋を繋ぐ」「大きなカウンターテーブルのみで成立させる」という2点の行為を改修方針としました。

コンクリート壁を破った跡は見えるようにあえて残しました。むしろ断面の石や鉄筋を丹念に磨き上げており、壁を壊して開け放すという「行為」の証を残しています。その「行為」とは、各々（人と人）の壁が開いていくことであり、一つのテーブルに集約することは、（人と人が）食を共にすることであります。

大きなカウンターはフラットな天板で、食材や料理人の手捌きも身近に見てとれ、向かいに座る他のお客様とも緩やかにつながります。奈良で瓦製造の経験を持つタイル作家・繁田至啓氏によるカウンターの特注タイルは、古代瓦に見られる手法で原土をざっくり混ぜあわせただけ。空気や水も混ざったまま焼くので温かみがあり、様々な石や土が混じり合う様子がマーブル状となって模様に現れます。この混ざり合う様子、それも人と人が出会い繋がっていくシェアリングコミュニティの思想にかけています。

各所に旧銀行の面影を残していたり、逆に銀行時代のディテールや色彩を建具や金物に取り入れたりなど、この場の記憶との親和や共有も試みています。

※『bird bird』1階シェアダイニングでは現在「紀寺の食事会 くちばし」をはじめとして、様々な食のイベントが開催されています。

※シェアダイニング以外の空間は「藤岡奈保子＋藤岡建築研究室」によるデザイン・設計です。

※Spaces other than shared dining are designed and managed by Naoko Fujioka + Fujioka Architectural Laboratory.

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